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役に立つ!最新判例紹介

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 変形障害と労働能力喪失率① 横浜地裁H21.6.10判決
 ・
変形障害と労働能力喪失率② 大阪地裁H20.11.25判決
 ・遺言能力 東京地裁H20.11.13判決
 ・
動物占有者責任 東京地裁H18.11.27判決
 建物の瑕疵と不法行為 最高裁H19.7.6判決
 パチンコ店の出店妨害 最高裁H19.3.20判決
 ・自動車の同乗者と過失相殺 最高裁H19.4.24判決
 ・製造物責任と瑕疵担保責任 京都地裁H18.11.30判決
 ・プロバイダの発信者情報不開示に対する損害賠償請求
  大阪地裁H18.6.23判決

 ・一家心中した者が死の直前に出した手紙による生命保険金受取人の変更
  福岡高裁H18.12.21判決
 ・飲酒運転による交通事故 千葉地裁佐倉支部H18.9.27判決
 ・交通事故と高次脳機能障害 札幌高裁H18.5.26判決
 ・認知症の遺言者の自筆証書遺言 東京地裁H18.7.25判決
 ・瑕疵担保責任の除斥期間の起算点(白ありの侵食による建物の
  欠陥のケース) 東京地裁H18.1.20判決
 ・株主の検査役選任における株式保有要件 最高裁H18.9.28決定
 ・祖父母による孫の誘拐 最高裁H18.10.12判決
 ・7年以上前の懲戒解雇事由による諭旨退職処分の有効性
  最高裁H18.10.6判決
 ・特約に基づく管理人の貸室立ち入りと不法行為
  東京地裁平成18.5.30判決

 ・原産地の誤認惹起行為 富山地裁H18.11.10判決
 ・期限の利益喪失による一括請求 大阪高裁H18.7.21判決
 退職後1ヶ月経過した後の自殺が労働災害と認定された事例
  東京地裁H18.9.4判決

 過去に紹介した判例へ

変形障害と労働能力喪失率① 横浜地裁 平成21年6月10日判決
[事案]  被害者(20歳大学生)が青信号交差点を自動二輪車で直進中,
 加害者運転の乗用車が右折してきて衝突し,被害者が左肺パンク,
 頭蓋骨骨折等で38日入院,13ヶ月通院して11級脊柱変形,
 12級右拇趾機能障害等併合10級後遺障害を残し,3652万円余の
 損害賠償を求めた。(「拇趾」は足の親指のこと)
[判旨]  脊柱変形は,労働能力を明らかに低下させるものではないが,将来,
 加齢による変形の可能性や荷重機能障害が発生する可能性は皆無
 でなく,脊柱変形以外の後遺障害のうち,最も重度の後遺障害である
 右拇趾の機能障害に関する喪失率を基礎として,労働能力喪失率
 14%,喪失期間は67歳までとするのが相当(右拇趾の機能障害は
 器質的障害であり,緩解の可能性はあるが,経年とともに,脊柱の荷
 重機能障害等の発現可能性は高くなるため)として,被害者の請求を
 一部認容し,加害者に2063万円余の支払いを命じた。

 交通事故の損害賠償請求においては,骨の変形は労働能力に影響を及ぼさ
 ないとして,労働能力の喪失はなかなか認められません。
 この判例では,他の後遺障害による労働能力喪失期間を判断するにあたって,
 脊柱変形についても考慮し,長期間の労働能力喪失を認めたようです。
 ただし,この事例の後遺障害の内容であれば,脊柱変形がなくても
 同じ結論が出た可能性もあります。
 やはり変形障害についての損害賠償請求には困難が伴います。

変形障害と労働能力喪失率② 大阪地裁 平成20年11月25日判決
[事案]  被害者(59歳女子保険外交員)が原付自転車に乗車し,
 一時停止規制のある道路から交差点に進入したところ,
 加害者運転の乗用車と衝突し,被害者は左鎖骨骨折,
 腰部打撲,恥骨骨折等の傷害を負い,
 12級5号左鎖骨変形癒合の後遺障害を残し,損害賠償を求めた。
[判旨]  残存した左鎖骨部痛等の症状は,左鎖骨の変形癒合によって
 生じた他覚的所見を伴う神経症状であり,労働能力に影響を
 与えるものとして,事故前の原告の稼働状況・稼動実績に照らし,
 67歳まで稼動継続する蓋然性が高かったとして,7年間14%の
 労働能力喪失とした。


 交通事故の損害賠償請求においては,骨の変形は労働能力に影響を
 及ぼさないとして,労働能力の喪失はなかなか認められません。
 この事案では,鎖骨の変形に伴い神経障害(痛み)が残っているため,
 労働能力に影響を与えると判断されました。このように,変形障害であっても
 痛みがある場合など,労働能力喪失が認められる場合もありますので,
 同様の後遺障害を負った方は,弁護士に相談してみて下さい。
 


遺言能力 東京地裁H20.11.13判決

[事案]

 公証人が読み上げる遺言書の案文に,間違いがなければ手を
 握って伝える,という方法で意思表示して作成された
 公正証書遺言の効力が争われた。

[判旨]

 手を握って答える方法では「口授(口伝え)」の要件を
 満たさないとして,公正証書遺言が無効であるとした。

 公正証書遺言は,民法969条にその要件が定められています。その要件の一
  つに「遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。」とあります。
  この事案では,遺言者が病気のため身体が弱り,話すことができない状態で,
  公証人が遺言の案文を読み上げ,間違いなければ遺言者が公証人の手を
  強く握るという方法で公正証書遺言を作りましたが,この方法では「口授」の
  要件を充たさないと判断されました。
  遺言を残したいと考えていても,体が弱って話すこともままならなくなってしまって
  は,遺言書を作ることが難しくなってしまいます。遺言書は,自分の意思を
  はっきり示せるうちに作っておきましょう。

動物占有者責任 東京地裁H18.11.27判決

[事案]

 飼犬を連れて散歩中に、他の犬同士の喧嘩を止めようとして
 その一方の犬にかまれた者が、加害犬の飼主に動物占有者
 責任に基づく損害賠償請求をした。

[判旨]

 加害犬の飼主に損害賠償責任が認められたが、犬の喧嘩の
 原因が、被害者が飼犬のリードを放していたことにあるとして、
 6割の過失相殺が認められた。

 公園で、被害者と他の2名がそれぞれの飼い犬をリードを放して遊ばせていた
 ところに、加害犬と飼主が通りかかったところで事件が発生しました。
 先にけんかを売ったのは遊んでいた犬の1匹でした。
 この判決では、加害犬を静止しなかった飼主に過失を認める一方で、
 被害者についても、公衆が通りかかる場所で犬を放していたことに過失が
 あり、その割合は被害者の方が大きいと判断しました。
 犬好きの人には厳しい判断かもしれませんが、本件のように思いがけず
 犬同士のけんかが起こることもあるでしょうし、犬を遊ばせるときには
 犬嫌いの人や小さな子供などにも十分に配慮する必要があることに
 留意してください。

建物の瑕疵と不法行為 最高裁H19.7.6判決

[事案]

 マンションを転売により取得した所有者が、マンションに瑕疵があり
 補修費用の損害を被ったとして、マンションの建築請負業者、
 設計者等に対し不法行為に基づき損害賠償請求等をした。

[判旨]

 請負業者等は安全な建物を建築する義務を負い、建物の瑕疵に
 より居住者や通行者等の生命、身体に被害を及ぼすおそれがある
 場合、不法行為により損害を賠償する責を負う。

 これまでも、建物の瑕疵を巡り所有者が請負業者等を相手に不法行為による
 損害賠償請求をした訴訟は多数ありましたが、不法行為の違法性の根拠を
 何に求めるかは一定していませんでした。
 また、故意に瑕疵を作り出したような強度の違法性がある場合にしか
 不法行為を認めないという判例もありました。
 この判決では、建物の居住者等には、建物の基本的な安全性の確保によって
 守られるべき一般的な保護法益が存在し、建物の設計者、施工者等は
 居住者等の第三者に対してこの保護法益を守る注意義務があるとして、
 ベランダの手すりが外れて人が落ちる危険がある場合等も瑕疵を認め、
 不法行為が成立するとしました。
 建物の消費者側にとっては、救済を受ける道が広がったといえるでしょう。

パチンコ店の出店妨害 最高裁H19.3.20判決

[事案]

 パチンコ業者が出店を計画したところ、地元のパチンコ業者らが
 出店計画地の近くに所有していた土地を社会福祉法人に寄付して
 児童遊園を設置したことにより、風俗営業法上の規制によって
 パチンコ店の出店ができなくなった。
 そのため、新規出店を計画したパチンコ業者が、出店を妨害した
 地元パチンコ業者ら及び社会福祉法人に対し、不法行為に基づく
 損害賠償を請求した。

[判旨]

 地元パチンコ業者らによる土地の寄付は営業の自由を侵害し、
 不法行為を構成するとして、地元パチンコ業者との関係では
 損害について、社会福祉法人との関係では不法行為の成否に
 ついて審理を尽くさせるため、原判決を破棄し高裁に差し戻した。

 この判決では、風俗営業法上の規制は、一定の地域内で良好な風俗環境を
 保全しようとする趣旨で設けられたものであるところ、社会福祉法人への
 土地の寄付の意図が風俗営業法の趣旨と関係なく、パチンコ店の出店妨害に
 あり、実際にそのような効果が生じているとして、土地の寄付は違法性を
 有するとしました。
 たとえ児童遊園の設置のような公共性がある事業に関する行為であっても、
 同業者の営業を妨害する目的を達成する手段とすることには問題があると
 いうことです。

自動車の同乗者と過失相殺 最高裁H19.4.24判決

[事案]

 内縁の夫が運転する車に同乗していた内縁の妻が衝突事故で
 傷害を負った場合、内縁の夫の過失を被害者側の過失として
 考慮すべきかが争われた。

[判旨]

 被害者と身分上、生活関係上一体を成すとみられるような関係に
 ある者の過失も被害者側の過失として考慮することができ、
 内縁の配偶者の過失は、被害者側の過失として考慮すべきである
 として、過失相殺について審理を尽くさせるため、原判決を破棄し
高裁に差し戻した。

 交通事故による損害賠償では、被害者にも過失があれば、加害者の
 過失との割合を定め、損害額から被害者の過失割合分を減額した金額に
 限り加害者に負担させることができます。
 このように、被害者の過失割合分を減額することを過失相殺といいます。 
 同乗者には、事故についての過失がないケースが多いと思いますが、
 被害者である運転者にも過失があれば、その過失割合分の損害額は
 運転者が負担すべきものです。
 加害者が同乗者の損害を全額負担した場合、今度は加害者が運転者に
 過失割合分を請求することになります。
 つまり、運転者と同乗者が夫婦であるなど、いわばお財布が一緒であれば、
 一度お財布に入ったお金を後で差し出すことになります。
 ですから、このような場合、初めから同乗者についても被害者側の過失として
 過失相殺するのが合理的です。
 これまで、夫婦である同乗者には過失相殺を認め、恋人関係の同乗者には
 過失相殺を認めない判例がありました。
 そして、この判決では、内縁の夫婦の場合、同乗者の損害も過失相殺すべき
 だと判断しました。

製造物責任と瑕疵担保責任 京都地裁H18.11.30判決

[事案]

 原告が市販の足場台を購入してから約3年9ヶ月後にその足場台の
 上で作業中に落下して傷害を負った。原告はその足場台の一脚に
 不具合があったとして、製造業者に製造物責任、販売業者に
 瑕疵担保責任に基づいて、治療費等を請求した。

[判旨]

 製造業者に製造物責任、販売業者に瑕疵担保責任を認め、原告の
 請求を認容した。

 製造物の欠陥によって損害を被ったときは、製造業者等に対して損害賠償を
 請求することができます。
 また、購入した物に隠れた瑕疵があったときは、売主に損害賠償を請求する
 ことができます。
 この判例では、製造物である足場台の欠陥の有無が争われました。
 そして、大学教授の意見と原告本人の供述から、元々足場台に不具合があり、
 通常の使用方法において脚の一つに変形が起こり、足場台が傾いて原告が
 落下したと認めました。
 さらに、3年9ヶ月という期間は足場台が通常有する安全性が維持されて
 しかるべき合理的期間の範囲内であると認め、製造業者に治療費等の実費、
 慰謝料等の損害賠償を、販売業者に足場台の代金の損害賠償を命じました。
 事故の原因が製造物の欠陥にあると思われるものの、製造業者や販売業者が
 対応してくれないような場合には、弁護士に相談してください。

プロバイダの発信者情報不開示に対する損害賠償請求
大阪地裁H18.6.23判決

[事案]

 ホストである原告が、インターネット上の掲示板に自身の名誉を
 毀損される書込みをされたとして、プロバイダに対し、書込みをした
 発信者情報を開示するよう請求したが拒否されたため、これによる
 精神的苦痛に基づく慰謝料の支払及び発信者情報の開示
 (特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報
 の開示に関する法律4条1項)を求めた。

[判旨]

 ・名誉毀損の成立を認め、プロバイダに発信者情報開示を命じた。
 ・プロバイダには情報開示義務があるものの、情報開示を
 請求する者の権利が侵害されているかどうかの判断が容易ではなく、
 情報開示しなかったことに故意・重過失(法4条4項)が認められない
 として、慰謝料請求は認めなかった。

 インターネット上の掲示板で誹謗中傷され被害を被ったときに、誰が書き込んだ
 のかがわからなければ、被害の拡大を防止することも、被害について
 損害賠償を請求することもできません。
 そこで、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の
 開示に関する法律」により、このような場合に一定の要件のもとでプロバイダ等
 に対して発信者情報の開示を求めることができると定められています。
 掲示板の誹謗中傷で被害を受けた方は、このような方法で書き込みをした
 人物を特定し、損害賠償請求等をすることもできます。

一家心中した者が死の直前に出した手紙による生命保険金受取人の変更
福岡高裁H18.12.21判決

[事案]

 生命保険の契約者とその父母が一家心中を図り、母、契約者本人、
 父の順に3人とも死亡した。
 保険金請求者(母の妹)が、契約者本人が死亡の直前手紙により、
 保険金受取人を父から自分に変更する意思表示をしたと主張して、
 生命保険会社に対し総額4200万円の死亡保険金の支払を求めた
 が、一審は、本件手紙によって保険金受取人を変更する旨の
 意思表示があったとは認められない、として請求を棄却したため
 保険金請求者が控訴した。

[判旨]

 本件手紙によって保険金受取人を変更する旨の意思表示がなされた
 と解するのが合理的である、などと判断し、原判決を一部変更、
 一部取消。生命保険会社に対し、総額3000万円の支払を命じた。

 生命保険契約で保険契約者が保険金受取人を指定しても、後日、
 保険金受取人を変更することができるとされている場合、保険金受取人の
 変更は、新旧受取人のいずれかに対する保険契約者の意思表示によって、
 直ちにその効力を生ずるものと解されています(最高裁S62.10.29判決)。

飲酒運転による交通事故 千葉地裁佐倉支部H18.9.27判決

[事案]

 加害者が飲酒運転中の事故により被害者がいわゆる植物状態と
 なって後遺障害1級と認定され、将来の介護費用等の損害額、
 過失割合が争われた。

[判旨]

 平均余命の期間につき将来の介護費用等を損害と認め、損害額を
 約3億9500万円と認定し、被害者に過失はないとして過失相殺を
 認めなかった。

 交通事故の被害者に障害が残って将来にわたって介護を要する場合、
 将来の介護にかかる費用は膨大な金額になります。
 この判決では、介護を要する期間や介護の方法につき被害者側の主張を
 ほぼ認めて、加害者に対して高額な将来介護費用の支払を命じました。
 また、交通事故では、双方に過失がある場合には過失の割合に応じて
 損害の負担を決めることになります。
 本件では、加害者が飲酒運転中に、路上に停車した車を避けるために
 対向車線にはみ出し、前方不注視で被害者に衝突したのに対し、被害者も
 車の誘導をするために車道上に立っていて衝突されたのですが、加害者の
 過失が著しいとして損害の全額を加害者に負担させるとしました。
 軽い気持ちで飲酒運転をすると、本件のように重大な結果を引き起こすこと
 になりかねません。
 被害者本人はもちろん、家族にも大変な苦痛を与えることになりますので、
 飲酒運転は絶対にしてはなりません。

交通事故と高次脳機能障害 札幌高裁H18.5.26判決

[事案]

 交通事故によって頚椎捻挫の傷害を負った被害者が、
 高次脳機能障害の後遺症が残ったとして加害者に対して
 1億2395万円を請求。一審が高次脳機能障害を否定し、
 加害者に対して237万円の支払いを命じたところ、
 これに対して被害者が控訴した。

[判旨]

 被害者が高次脳機能障害を負っているかについて専門家の
 意見は分かれたが、高次脳機能障害が現在では医学的判断が
 難しく近時においてようやく社会的認識の定着してきたものであること
 を踏まえ、被害者の事故直後の症状と日常生活における行動なども
 検討の上、高次脳機能障害が認定された。
 その結果、100%の労働能力喪失が認められ、加害者の被害者に
 対する1億1793円の支払が命じられた。

 交通事故をめぐる訴訟においては、ほとんどのケースで後遺障害の有無や
 程度が争われます。
 特に、いわゆるむちうちや高次能機能障害は目に見える傷害がないことから、
 症状を訴えても詐病と疑われたり、事故による受傷との因果関係が
 はっきりせずに十分な保険金を受け取れないことがしばしばあります。
 この判決では、交通事故を境に性格や成績が激変した被害者について、
 高次脳機能障害の後遺症を認めました。
 医学的に診断方法が確立しておらず後遺症が認められにくいケースで、
 被害者の保護を重視して、司法上の判断を下したもので、同様の後遺症に
 苦しんでいる方にとって、励みとなる判決ではないでしょうか。

認知症の遺言者の自筆証書遺言 東京地裁H18.7.25判決

[事案]

 第1の遺言書に基づき不動産の所有権移転登記がなされていた
 ところ、第2の遺言の遺言執行者が、遺言の執行を妨げている
 として、第1の遺言の受遺者に対し所有権移転登記の抹消登記
 手続を求めた。
 第1の遺言の受遺者は、遺言者は第2の遺言作成当時重度の
 認知症に陥っており、遺言能力がなかったため、第2の遺言は
 無効であると争った。

[判旨]

 遺言者には遺言当時重度の認知症状があったこと、従前の遺言書と
 全く異なる内容の遺言をする合理的理由が見出せないこと、受遺者に
 旅行に連れ出され他者の関与の及ばない状況で遺言書が作成された
 こと等の理由から、第2の遺言書作成当時、遺言者は遺言能力を
 有していたとは認められず、第2の遺言は無効であるとして、
 請求を全部棄却した。

 複数の遺言書があってその内容が矛盾する場合は、原則として、
 後で作った遺言書が有効になります。
 この事案では、先に作られた第1の遺言書が公正証書であったのに対し、
 後で作られた第2の遺言書は自筆証書でした。
 この自筆証書作成時に、遺言者にはものごとを正しく認識して
 判断する能力がなかったと認定され、第2の遺言は無効であるとされました。
 本件のように、自筆で書く自筆証書遺言はその有効性が争われたり、
 内容が不明確でトラブルになることも珍しくありません。
 遺言をさせる場合は、できればご自身がお元気なうちに、
 公証人立会のもとで作る公正証書遺言を作成することをお勧めします。

瑕疵担保責任の除斥期間の起算点(白ありの侵食による建物の欠陥のケース)
東京地裁H18.1.20判決

[事案]

 土地建物の買受人が、建物に白ありの侵食による欠陥及び建ぺい率
 規制違反があるとして、瑕疵担保責任に基づく補修費用等の
 損害賠償を求めた。

[判旨]

 建ぺい率規制違反は「隠れた瑕疵」ではないが、白ありの侵食による
 欠陥は「隠れた瑕疵」にあたるとしたうえで、除斥期間の起算点を
 「白あり被害が土台の大部分に及んでおり、建物の効用が
 相当程度減殺されることを認識した時点」と解し、除斥期間は
 経過していないと判断した。

 売買契約で買った物に「隠れた瑕疵」つまり、外見からは明らかでないような
 欠陥があることがわかり、売買の目的を達することができないことがわかった
 ときには、買主は売主に対して契約の解除や損害賠償の請求等ができます。
 民法では、この請求ができる期間は、瑕疵を知ってから1年と制限されて
 います。
 この判例では、まず、建ぺい率規制違反は事前に説明があったとして
 「隠れた瑕疵」ではないと判断されました。
 そして、白あり被害について「瑕疵を知ったとき」は、単に白あり被害の存在を
 知ったとき(請求の1年以上前)ではなく、重大な白あり被害であることを
 知ったとき(請求の前1年以内)として、買主の請求を認めました。
 買った物に欠陥が見つかったときは、早めに専門家に相談されることを
 お勧めします。

株主の検査役選任における株式保有要件 最高裁H18.9.28決定

[事案]

 株主が、株式会社の業務執行に関する不正行為等の調査の
 ために検査役選任の申請(平成17年改正前の商法294条1項)を
 した時点では、株式保有要件である総株主の議決権の
 100分の3以上の株式を有していた。
 しかし、その後の新株発行により株式保有要件を欠くに至った場合に
 おける当該申請の適否。

[判旨]

 株式保有要件は裁判時に有する必要があり、要件を欠くに至った
 事情が、少数株主権が没却されるような信義・公平に反するような
 特段の事情でないかぎり、申請人の適格を欠き不適法であるとして、
 特段の事情について審理を尽くさせるため破棄、差戻し。

 会社法においても、検査役選任について358条で同じ要件が定められて
 います。
 株式会社の取締役が業務について不正行為等を行い、さらに、検査役に
 調査させないように、検査役の選任を妨げる目的で新株発行を行うようなことを
 すれば、「特段の事情」があったと認められ、申請時の株式保有要件をもって
 申請人の適格が認められることになると思われます。

祖父母による孫の誘拐 最高裁H18.10.12判決

[事案]

 祖父母が次女の下から当時3歳の孫を自宅に連れ戻した未成年者
 誘拐事件につき、一審判決でいずれも実刑(懲役10月)に処せられ、
 両名からの控訴審も控訴棄却した。
 そのため、祖父母が上告した。

[判旨]

 刑事裁判になった場合でも、刑の量刑にあたっては、継続的な関係に
 ある親子間の紛争という事案の性質に照らし、被害者である
 未成年者の福祉を踏まえつつ将来的な解決の道筋なども
 勘案しながら、刑事司法が介入すべき範囲につき慎重に検討する
 必要があるとして、最高裁としては異例の量刑の判断のみのために
 控訴審判決を職権で破棄し、執行猶予を付す判断をした。

 たとえ祖父母であっても、親権者である母等の元から子を連れ去れば
 犯罪になります。
 この事案では、祖父母に犯罪が成立することを前提として、1審、2審では
 比較的形式的に量刑が定められましたが、最高裁では、犯罪に至る背景や
 現在の子の福祉、親子間の今後の関係等を実質的に考慮して、執行猶予を
 付すとの判断をしました。
 最高裁で量刑だけを見直すケースは非常に珍しく、本件では、最高裁が
 杓子定規ではない実体にあった判断をしました。

7年以上前の懲戒解雇事由による諭旨退職処分の有効性
最高裁H18.10.6判決

[事案]

 7年以上前に職場内で上司に対する暴行事件を起こしたことなどが
 就業規則所定の懲戒解雇事由に当たるとして諭旨退職処分、
 その後に懲戒解雇処分を受けた従業員が、本件諭旨退職処分による
 懲戒解雇が無効であるとして従業員たる地位の確認を求めた。
 雇用者側は暴行事件についての刑事処分を待っていたことを理由に
 7年以上経過後の懲戒処分が正当なものであったと主張した。

[判旨]

 刑事処分を待たなくても目撃者等の調査により事件直後の懲戒処分が
 可能であり、長期間が経過し、企業秩序が回復した時点での
 懲戒処分は合理的理由を欠き、社会通念上相当なものとして
 是認することはできない。
 本件諭旨退職処分は権利の濫用で無効であり、懲戒解雇処分も
 無効である。

 雇用者が従業員の懲戒処分をする場合には、適時に適切な処分を行う
 必要があるということです。
 これが実践されれば、雇用者側が恣意的な懲戒処分も難しくなるのでは
 ないでしょうか。

特約に基づく管理人の貸室立ち入りと不法行為 東京地裁平成18.5.30判決

[事案]

 マンションの一室の賃貸借契約において、賃料を滞納した場合に
 部屋に立ち入ることができる等の特約が設けられていた。
 この特約に基づいて、マンション管理会社の従業員が賃借人の
 不在中に部屋に立ち入り、扉及び建物内の窓の内側に施錠具を
 取り付け、賃借人が建物を使用できないようにした。
 そのため、賃借人が管理会社に対して不法行為に基づき損害賠償を
 請求した。

[判旨]

 契約書の立ち入り条項・使用中止条項は、賃借人の平穏に生活する
 権利を侵害するものであることが明らかであり、法的手続きによらずに
 賃借人の権利を侵害することが許されるような特別の事情があるとは
 いえないので、同条項は公序良俗に反し無効であるとして、
 管理会社に慰謝料5万円の支払を命じた。

 一般的に、住宅の賃貸借契約書には、家賃の滞納の場合に貸主が借主の
 承諾なしに立ち入りや残地物の処分ができるとの特約条項を定めたものが
 多くみられます。
 確かに、借主が何ヶ月分もの家賃を溜めたまま行方不明になった場合など、
 貸主は、家賃が入らないまま別の人に貸すこともできず、非常に困ることも
 あるでしょう。
 しかし、そのような場合も法的手続によって解決することができる以上、
 きちんと手続を踏むべきです。
 もちろん、借主も貸主とトラブルにならないよう気を付けて下さい。

原産地の誤認惹起行為 富山地裁H18.11.10判決

[事案]

 「氷見うどん」の表示で販売されているうどんについて、製品、
 原材料ともに富山県氷見市で製造されていない場合、
 不正競争防止法2条1項13号に規定する原産地の誤認惹起行為に
該当するかが争われた。

[判旨]

 氷見名物原産地の誤認惹起行為に該当するとして、競業者に対して
 不正競争行為により被った損害額を支払うよう命じた。

 不正競争防止法は、消費者が商品の原産地や品質等について誤った認識を
 持つような表示をして販売することを禁じています。
 また、そのような違反行為によって他人の営業上の利益を侵害した場合には、
 損害賠償義務を負うと定めています。
 本件のように、消費者が原産地を誤認するような表示をして商品を
 販売することは禁じられていますので、事業者の方は十分注意して下さい。

期限の利益喪失による一括請求 大阪高裁H18.7.21判決

[事案]

 貸金業者と消費者の金銭消費貸借契約において、期限の利益を
 喪失して9年後に、消費者が貸金業者の要求により分割弁済を
 開始した。
 約10年後、消費者が借入元金の5倍近くの金員を支払った後に
 分割弁済が滞り、貸金業者はこのときはじめて当初の期限の
 利益喪失を主張して当時の残元金及び遅延損害金を請求する
 訴訟を提起した。
 原審裁判所は、貸金業者の請求が権利の濫用や信義則違反には
 あたらないと判断し貸金業者の請求を認容、これに対して消費者が
 上告した。

[判旨]

 原判決を破棄、差戻し。本件のような事実関係の下では、消費者が
 期限の利益を再度付与されていると誤解することは特段の事情なく
 推認される。
 消費者がかかる誤解を有していたか、また、貸金業者がかかる誤解を
 解く措置を講じたか否かを審理せず、貸金業者の請求を認容した
 原審の判断には審理不尽の違法があるとした。

 多重債務の問題が社会問題になって久しく、多重債務者が借金に追われて
 自殺するケースもめずらしくありません。
 貸金業者の高金利や過剰な取立行為等については、債務者側を保護する
 内容の判例が多数出ています。
 多重債務の返済や厳しい取立に苦しんでいる方は、迷わず弁護士に
 相談してください。

退職後1ヶ月経過した後の自殺が労働災害と認定された事例
東京地裁H18.9.4判決

[事案]

 保育士として無認可保育所に勤務していた女性が、精神的ストレス
 によるうつ病を発症して勤務先を退職、その1ヶ月後に自殺した。
 女性の父親は、娘の自殺は業務に起因するうつ状態の中で
 行われたとし、労働基準監督署に遺族補償年金及び葬祭費の
 支払いを請求した。
 しかし、労基署がこれを支給しない旨の処分をしたため、父親は
 本件処分を不服として審査請求及び再審査請求をしたが、いずれも
 棄却された。
 そのため、父親は本件処分の取消を求めて本訴を提起した。

[判旨]

 女性の精神障害は、業務による心理的負荷が、社会通念上、
 精神障害を発症させる程度に過重であったために発症した
 「適応障害」であり、旧労働省通達の指針によれば、これに
 罹患していると認められるものが自殺を図った場合には、
 特段の事情がない限り、原則として当該自殺による死亡につき
 業務起因性を認めるのが相当である。
 また、退職後1ヶ月経過していたが、症状が持続していたと
 認められるので、女性の死亡は労災であると認定するのが
 相当である。

 従来は自殺が労災と認められるのは困難でしたが、平成11年に旧労働省が
 通達で指針を出したこともあり、近年判例も集積されてきています。
 長時間労働等が原因で精神疾患を患い、自殺に至るケースは後を絶ちません。
 このような不幸が起こらないように、雇用者側も対策を講じることが望まれます。

 
 
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